芸術の秋には、この1本を!
今だかつて映画でこんな衝撃うけたことない・・・
今から20年前のこと
遅刻ばかりして働き難くなっていたレストランに
またまた、その日も寝坊して猛ダッシュ。
従業員通用口までたどり着いたのは
入りの5分前
ユニホームに着替えたり
エレベーターに乗ったりしてると
仕事場には間違いなく間に合わない!
今日も遅刻だ
(俺はなんて駄目人間なんだ、昨日こっぴどく怒られたばかりなのに)
私は自己嫌悪に陥りながら遅刻した理由を考えだしたが、
だらだらと体に汗が流れているのに気付き、
どうせ怒られるのならと
通用口から離れた木陰の所へ行き汗をぬぐってタバコに火を点けた。
(どうせクビにでもなるんだから行くのやめよ、
もうカエロ、明日からの事は後で考えることにしよ)
私はタバコを吸い終えると逃げるように駅へと向かい、
渋谷行きの新玉川線の電車に飛び乗った。
恵比寿のぼろアパートをめざして。
今頃
「あいつまた大遅刻ですよ!」
などと言われてるに違いない。
だが電車の中は冷房がきいていて気持ちが良かった。
知ったことかと思おうとした。
乗客は少なかったので徐々にリラックスできた。
ほんの10分前までには考えられない展開である。
(給料よかったのに、もったいないな、
なんで俺は遅刻ばかりしてしまうのかな)
などと落ち込んでいる間もなく渋谷に着いた。
地下鉄から外に出ると強烈な暑さだった。
クーラーのない自分の部屋に戻るには早すぎる。
(映画館にでも入って涼もう、映画観れば気分も変わるしな)
演劇青年だった私はいつもバイトばかりしていて、
案外、まっ昼間から映画を観ることは少なかった。
渋谷駅の向かいの東急の映画館は、今まだあるのだろうか。
あそこでは「アマデウス」や「イヤーオブザドラゴン」それに「フェノミナ」などを観たものだ。
そして、
その日、
たまたま上映していたのが
「2001年宇宙の旅」(リバイバル)だった。
私は最近の若い映画ファン同様、
この映画を観たことなかったし観ておきたいという気持ちもなかった。ただ、少し前に観た何かの映画で上映前に予告編を流していたのでちょっと心に引っ掛かっていたかもしれない。
とにかくまるで吸い込まれるように映画館に入っていった私は
客席に座り上映を待ったのであった。
2時間は現実から逃避してやる!
させてもらおうじゃないか!
スタンリーキューブリックとかいう人!
ブザーが鳴った。
お決まりのアナウンスの後、場内が暗くなった。
しかし
映画はすぐには始まらなかった。
人の心の不安をあおる様な不気味な音楽が暗い場内に流れ始める
(なんだこりゃ)
なかなかその音楽はやまなかった。
聞いているうちに気味が悪くなってくる。
まだやまない。
(上映技師さんのミステイク?)
とまで
勘違いさせるようなオーバーチェアである。
耐え切れなくなる寸前で音楽が終わり、
画面が真っ暗に。
MGMのライオンが少し吼えたかと思うと又画面が真っ暗に。
唐突に真っ暗な宇宙の中に太陽が現れ
「ツァストラはかく語りき」が
大音量で鳴り響いた。
私は衝撃を受けた。
私は小さな存在だと
映像と音楽が
お前なんて無だ
と言っていやがる!
今まで観た映画とはあきらかに違った。
最初の1分で私を感服させた。
人類の夜明けの、道具を考え出した猿のシーンにもだ。
人類が誕生した瞬間を今、目撃したぞ と。
物凄い偉大な猿が確実に存在したからこそ
今映画を観ている自分がいるのかと
その猿を今みたぞ!と
舞台は宇宙へと進み、
月、
そしてディスカバリーへと移っていく。
宇宙飛行士がコンピューターに隠れてポッドで密談、
ところが
というところで映画は休憩になった。
その瞬間、私は100パーセント映画に入り込んでしまっていた自分に驚いた。
夢から一時覚めたのと同じ感覚であった。
休憩の間も物語の先のことしか頭になかった。
またそんな自分が嬉しかった
朝の出来事
これからのこと
全くどうでもよくなっていたからだ。
いい映画が
そういうハイな感覚に導いてくれることを
知っていたし
まさに今その映画を観ている真っ最中であることが
嬉しかったのである。
後半は いきなり途方もない、
悪夢の様な事件(?)から始まり、
幻覚のエウロパのシーン、
難解とされるエンディングまで、
これまた我を忘れて入り込んだ。
映画を見終わったその日の午後、
私はこの映画を観た興奮が冷めなかった
20年たちました。
今、たまにDVDで観かえしても
あのときの感動には及びはしません。
でも、あのときの感動のこまかなところまで
思い出したくて
何度も観てしまうのです。
オーバーチェアは部屋を暗くして
MGM
「2001年宇宙の旅」であります!
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